大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和35(オ)769 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人百崎保太郎、同高林茂男の上告理由第一、第三点について。

原判決は、本件被上告人宗教法人B1が本件上告人らに対し、別件として、横浜

地裁昭和二三年(ワ)第三七〇号事件において旧B1所有の建物の明渡と有体動産

の引渡を訴求し、同地裁昭和二三年(ワ)第四〇七号事件において死体及び遺骨の

改葬を訴求し、右二件の別件訴訟において、本件上告人が被上告人B1の設立の無

効及び被上告人B2が右B1の住職に特任されたことの無効を主張していること、

右別件二件はいずれも、本件訴訟の提起又は請求趣旨の訂正に先だつて提訴されて

いることを認定した上、本件上告人がB1設立の無効を主張するためには、右別件

両事件において争うことが適切な手断であつて、右別件両事件がすでに係属してい

るのに、その前提問題として判断されるに過ぎないB1の設立の効力の有無につき、

別に本件訴訟によつてその確認の判決を求める利益を肯定する余地はなく、又債権

者の何人たるかを確定することによつて上告人の事務管理者としての法律上の地位

に何らの変更影響を及ぼすものではないから、上告人は本件訴訟の目的たる法律関

係を本訴において独立して確定する利益がないと判断しているのである。

論旨は、私権保護の要件の存否は口頭弁論終結時を標準として決すべきであるか

ら、本件訴訟の提起又は請求趣旨の訂正が前記別件訴訟の提起より後であるからと

いつて、本件確認の判決を求める利益なしとするを得ないし、確認の訴はそれ自身

独立の権利保護の方法であり、確認そのものに何らかの利益があれば足り、更に高

度の権利保護の方法の有無は問うところでないから、前記別件の訴訟が既に係属中

であつても本件確認の訴の利益は存在する。又上告人は旧B1所有の財産を占有管

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理しており、これを旧B1の清算人に引渡す義務があるところ、正当な清算人と認

められない本件被上告人らより右財産の引渡を求められているのであるから、上告

人の地位に法律上の危険乃至不安が存在するものであつて、それを除去するにつき

本件確認の判決を求める利益があるのに拘らず、原判決はこれと異なる判断をした

のは法令の解釈を誤まり判例に違反すると主張する。

しかし乍ら、確認の訴が許されるためには、被告に対する関係において原告の地

位に法律上の危険乃至不安が存するのみでなく、それを除去するにつき、当該確認

判決を得ることが適切な手段であることを要するのであつて、別件訴訟の前提問題

として判断され得るにすぎない事項につき、改めて別に確認の判決を求める利益を

肯認すべきでないことは当裁判所の判例(昭和三一年(オ)第二六七号昭和三三年

七月一八日第二小法廷判決裁判集三二号八六一頁参照)とするところである。しか

らば、前記原審認定の事実のもとにおいて、上告人が他に権利保護の利益の存在を

理由づけるに足る事情を主張しない本件において権利保護の利益を否定した原判決

の判断は正当であり、所論引用の大審院判例はいずれも本件に適切ならず、引用の

最高裁判例は所論に資するものではないから、論旨は採用できない。�

同第二点について。

論旨は、原判決において上告人が旧B1の前住職の子でその相続人の一人である

というだけの関係、竝びに本訴の相手方が単にB1の住職であるというだけの関係

に基づいて、本訴提起の法律上の利益を有するとはいえないと説示している点を捉

えて、その確認の利益なき所以を示さず、判決に理由を附さない違法があると主張

するけれども、右説示は当然のことを述べているのであつて、その理由を詳細に説

明する要なきものであるから、所論のような違法はなく論旨は採用に値しない。

同第四点について。

論旨は、原判決は、本件各訴の変更はその基礎に変更がないものであるから、そ

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の新請求について訴訟係属の効果を発生したと判示しながら、新請求について確認

の利益がないと判示しているのは理由そごの違法があると主張するけれども、訴の

変更が適法であるため新訴について訴訟係属の効果を生じたことと、その新訴につ

いて権利保護要件がないということとは矛盾することではなく、訴訟係属を生じた

請求について初めて権利保護要件の有無が判断さるべきものであるから、原判決に

は所論のような違法はなく、論旨は採用できない。

同第五点について。

論旨は、原判決は、上告人が旧B1の財産の事務管理者だからといつて本訴確認

の利益を有するものではなく、その財産引渡しの相手方が不明ならば引渡義務を免

かれ、事務管理を終了する方法を供託等により他に考え得ると判示したけれども、

不動産は供託し得ないから、原判決は事務管理竝に供託に関する法令の解釈を誤つ

た違法があると主張する。しかし、事務管理者としての上告人に本訴確認の判決を

求める利益のないことは前示上告理由第一、第三点において説示したとおりであり、

供託の目的物は動産たると不動産たるとを問わないものであるから、論旨は採用し

得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 斎 藤 朔 郎

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